Nikon Z9 を凡そ一月余り使用してシャッター回数も1万回Overとなりましたので少し当方の視点でのレビューをUpさせて頂きます。
何と比較するかによって書き方が違うのですが当方が長年 Nikon の D一桁機を使って来た事から D6 との比較が一番ではと思います。
- 外観と操作性
当然ながらD6の操作性の方が馴染んでいるのですが Z9 も当初少しの違和感があったものの直ぐに慣れました。
多くはボタン配列が移動した事による違和感であったと推測されます。
D6より体積で20%小さく110g程軽くなってる事で当方の手にはZ9の方がフィットします。
メニューの操作性はボタン位置を除けばD一桁機の操作性を継承してるので解りやすいです。
ファインダーに関しては丸形ファインダーが採用されてとても良くはなったのですがアイキャップ(接眼目当て)が必要で早期に販売される事を切望します。
ファインダーの描写に関しては Real-Live Viewfinder はミラーレス機の理想の形と思います。
つまりデュアルストリーム技術によって、メモリーカードに記録するための静止画画像データと、電子ビューファインダー、画像モニターに表示するライブビューデータを個別に同時処理すると言う技術です。
光学ファインダーに慣れている当方にも自然な見え方で電子ビューファインダーである事を忘れさせる出来上がりだと思います。
このお陰で全くブラックアウトする事なく野鳥の飛翔シーンをファインダーで追えます。
とは言え光学ファインダー(中でもD850,D6に積まれている)は素晴らしく特に明暗差が大きい場合でもスッキリと見えて迷う事がありません。Z9のファインダー像もミラーレスでは最高だと思いますが更なる改善が必要かと感じます。
- 露出の精度
D6の露出の精度は完璧です、Z9も同格の精度を秘めてると思います。
ただ被写体認識の追尾で撮影してると野鳥がフレームのセンターからズレた場合に思いがけない露光になる事がしばしばありました。
これは当方が中央重点測光を行っている為に中央部から外れた位置に野鳥が移動しその状態でシャッターを切るが故の現象だと推測してます。
D6ではフォーカスしてシャッターボタン半押しで露出値をホールドしフレミングを決めてシャッター全押しの操作に慣れてるのでこれが災いを起してます。
なのでマルチパターン測光やスポット測光を使うように変更してます。
- AF(Auto Focus)の精度
D6では3Dモードはあまり使わなかったので被写体認識とその追尾に関して比較は難しいのですが歩留まりと言う点で両者を比較してみました。
D6ではGroup Focus 及び AF-C シングルポイントAFを多用し Z9 は ワイドエリア AF(L) と AF-C シングルポイントAFを使った場合の歩留まりの比較です。
D6 は流石に専用AFモジュールで全点クロスタイプセンサーのトリプルクロスセンサー配列によるAFモジュールですのでAF-ONボタンに触れただけで瞬時に合焦すると言う感じです。
撮影現場でのこの威力はどの様な場面で恩恵に預かって来たかをZ9と比較すると低照度で黒い鳥に対する合焦スピードになります。EV8(ISO100)位から Z9 では厳しい状況が発生し AF-C シングルポイントAFでも合焦スピードが歴然と差がでます。
しかしながら当方が撮影してる被写体でD6で撮れてZ9では逃すと思われる確率を考えると凡そ 3% 位ではと推測されます。つまり100枚撮影して3枚程度になります。
この点だけを捕らえると残念ながら Z9 は D6 には及ばないです。これは Z9 に関わらず全てのミラーレス機に言えることだと推測されます。
被写体認識と追尾と言う観点では D6 の場合撮影者の技量に大きくゆだねられます。これからの時代は被写体認識と自動追尾の技術が大きく発達し撮影はそれに依存すると推測出来ます。なので Z9 の Firmware Update に期待したい所です。
(この辺りは非常に難しくて飛翔してる野鳥の目にシングルポイントAFで合焦し続けられる技術力があってとの事なので個人の能力にかかってます。)
- 電子シャッターの危惧
D一桁機と他のニコン製一眼レフの大きな違いはシャッター機構で微振動を抑えたバランサーによる素晴らしいシャッターを搭載してました。
Z9 ではその特徴的で素晴らしい機能を捨て去ってメカシャッターレスになりました。ニコンの英断に脱帽です。
危惧される点はローリングシャッター歪が出ないかの一点ですが、全く気になる画像は発生してません。
D6 では 1/8000秒がMaxスピードでしたが Z9 では 1/32000秒とMax値が格段と上がってます。この利点を生かした撮影領域も期待出来ます。
- 動画機能
D6と比べて圧倒的に動画機能が拡張されてます。言うまでも無く8K動画に対応されてる訳です。
当方の着眼点は動画撮影での被写体認識と追尾機能です。
従来動き回る野鳥を追う場合にAF-ONボタンを押す事でフォーカス合わせを行ってました。しかしボタンを押す事で微振動が起こり画面揺れが発生していたのは事実でこれが無くなり歩留まりが格段に向上してます。
またファインダーで動画撮影時も追従出来る事が大きな利点です。(Z6iiでも可能ですが被写体認識と追尾が出来ません)
- 連続撮影
RAW撮影での連写は D6(秒14駒)、Z9(秒20駒) と言う事ですが画素数が2倍以上 Z9 が大きいのでメディアに書き込む量が半端なく多量となります。
現在使用しているメディアは ProGrade Digital の Gold (CFexpress 読込1700MB/s 書込1400MB/s )ですが、これは連写4~5秒で書込み遅延が発生して遅くなります。このスピードを維持するにはさらに書き込みが早いメディアか、もしくは20駒から少し落とした値を使うのが良さそうです。またRAW画像の圧縮方式として”高効率★”と言う新しい圧縮方式を選択する必要があります。
当方の思いとしては出来れば17駒/秒で使えれば良いと思います。(残念ながら現時点では20駒の下は15駒になります)
尚、D6の経験上14駒あれば野鳥の場合充分であると認識してます。
- 画質に関して
有効画素数4571万画素で当方が使用していた D850 とほぼ同じ画素数ですが D850 の場合 ISO 1600以下であればその高画素の描写力で特に鮮鋭度が素晴らしいものですが高感度になるとノイズの影響が発生してました。しかしながら Z9 では今の所 ISO 6400,12800でも充分な描写である事から高速連写機としての高精細画質を充分確保されてます。
さらにクロップ(DXで1.5倍)使っても凡そ2000万画素あり D6 と変わらない画素数なので64(600mm F4)をテレコン無しで使うケースが多くなりました。これは大きなアドバンテージです。
特に遠景の野鳥を拡大トリミングしても耐えられる描写力に脱帽です。(サンプル画像は以下に添付)
- バッテリーに関して
予備のバッテリーも準備して使用してますが凡そ3000駒は撮れるので満充電のバッテリーを撮影中に交換する事は無い状況です。
またバッテリーの充電器がコンパクトになりUSB Type-C での給電、充電が使えるので遠征時の荷物が減る事に繋がり理想的です。
上記8項目に対してレーティングを付けて見ると(3:良好、2:普通、1:劣る)D6は16ポイント、Z9 は20ポイントで汎用性の高さが伺えます。
機能の改善点(要望)
- D6のFirmware 1.20で追加された”撮影機能の呼び出し(ホールド)”と言う機能が Z9 ではまだ実装されてません。
これは予め設定した撮影機能(露出モード、露出倍数、絞り値、シャッタースピード、AFエリアモード、他 を割り当てられたボタンを押すだけで登録された撮影機能に切り替わる機能です。
これを使用する事で一瞬で撮影機能が変えられます。野鳥が飛び出した時に飛翔撮影モードに一瞬で切り替える事が可能となります。
- 低照度で遠距離、黒い被写体でのシングルポイントAFのスピード向上
- アイキャップ(接眼目当て)は必要不可欠ですので発売を希望します。
これらは既にニコンへ要望済みです。
便利な機能(Tips)
- AFエリアモードを上手く切替えて撮影する方法:
まずシャッタボタンAFを OFF に設定しAFエリアモードをワイドエリアAF(L) に設定します。次にAF-ONボタンは AF-ON(初期設定)に設定します。さらにサブセレクター中央をAFエリアモード+AF-ONに設定しAFエリアモードはシングルポイントAFに割り当てます。
通常は親指フォーカスでAF-ONボタンを押して被写体認識の追尾で撮影します。色々な条件でAFが迷ったと判断した時はサブセレクター中央を押してシングルポイントAFで補正する方法です。 またFn3ボタンに”拡大画面との切替”を設定しておいてシングルポイントAFでも合わせられないケース(小枝を通した撮影等)はFn3ボタンを押して拡大表示しレンズのフォーカスリングでマニュアルフォーカスすると確実です。
そしてFn1ボタンにAFエリアモードを3Dトラッキングに割り当ててます。
- 静止画撮影メニュー切替:
Fn4ボタンを”撮影メニューの切替え”に設定しておいて静止画撮影メニューを切り替える事で撮影機能の変更が可能です。
例えば静止画撮影メニューBに野鳥撮影の止まり物撮影としての機能を割り当て、静止画撮影メニューCに飛び物撮影を割り当てて設定し Fn4ボタンを押しながらコマンドダイヤルで静止画撮影メニューを切り替える方法です。
しかしながら瞬時と言う事であれば”撮影機能の呼び出し”の方が便利です。
- 撮影機能の呼び出し:
D6の Firmware 1.20 で追加された”撮影機能の呼び出し(ホールド)”はまだ実装されていないので割り当てたボタンを押し続ける必要があります。
これは野鳥を撮影していて急に飛出し空抜けになったケースは当然ながら露出倍数等が変わるので事前に設定した撮影機能で撮影出来ると言う機能です。
露出モード:M(マニュアル)、シャッタースピード: 1/3200秒 絞り F8、ISO:AUto 露出補正 +1.0、AFエリアモード:ダイナミックAF(M) or ワイドエリアAF(L) 等 に設定します。
この機能をレンズのファンクションボタンに割り当てます。そしてこのボタンを押しながら撮影する手順です。(ホールド)が提供されれば一度押すだけで作動します。
- AFエリアモードのワイドエリアAF(L)と 3D-トラッキングを切り替えて使用する。
野鳥が複数羽いるケースではワイドエリアAF(L)だと認識が高い野鳥にフォーカスが行くので特定の野鳥を決めて撮影するケースでは3D-トラッキングを使用するのが適切です。当方はFn1ボタンに3D-トラッキングを割り当ててこのボタンを押しながらフォーカスする事で3D-トラッキングを使用した追尾を利用してます。
総括:上記の点を鑑みて Z9 のレビューの総括を述べると次の様な結論になります。
- 次の様な被写体が主である場合は D6 が望ましい。
報道写真が主な被写体。
ネイチャー写真でも低照度の場面や飛翔体が中心の撮影領域。
- 動画も含めて上記以外の被写体では Z9 は遥かに D6 を越えたパフォーマンスで将来的な拡張(Firmware Update)を考慮しても移行は今でしょうと言う結論かと思います。
当方が撮影する被写体で D6 で撮れて Z9 では厳しい被写体は 3% 、 Z9 で撮れて D6 では厳しい被写体(動画含む)は25%と言うのが経験値として推測される数字となります。
- レンズマウントの有効性
内径55mm、フランジバック16mmの大口径マウントによるレンズ性能が期待出来る。
特に広角系は優れたレンズが既に製品化され、今後提供される超望遠レンズの性能も大きく期待出来ます。
キャッチアップ画像はトリミング耐性を含めた画像サンプルとして先日撮影したミヤコドリとホオジロガモ雌の写真を撮影画像(ノートリイング)とトリミング画像をUpさせて頂きます。
撮影データ:Nikon Z9 AF-S Nikkor 600mm f/4E With FTZⅡ 露出Mode: Manual 1/3200秒 F5.6 ISO: Auto WB: 晴天
写真1 ミヤコドリ トリミング画像
写真2 ミヤコドリ 元画像 これだけ距離有りでもワイドエリアAF(L)でピンが来ます。
写真3 ホオジロガモ トリミング画像
写真4 ホオジロガモ 元画像
写真5 ホオジロガモ トリミング画像
写真6 ホオジロガモ 元画像
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